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釣光穂 | Shot eye to see you.

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一見すると編み物でできたオブジェのような、細かな編み目と柔らかい質感、暖かな色味が特徴的な釣光穂の作品は、すべて陶器でできています。釣は、紐づくりと呼ばれる古くからの陶芸技法を応用し、作品を制作しています。陶土を細長くのばし捻ったものを、下から積上げ成形することで、まるで糸を編んだかのような繊細な編み目を表現しています。

こうして制作される釣の作品は、編み物がしなってそこに置いてあるような、触れると形を変えそうなフォルムをしていたり、糸の端が始末をせずにそのまま残されているような、遊び心のあるディテールがみられるところも魅力です。

編み物のような見た目の陶器作品の背景には、人間が昔から続けてきた、「つくること」に必ず付随する「装飾すること」への興味があります。創作や装飾に対する欲とは一体何なのか、日々の制作のなかで釣は考えを廻らせます。編み物を編む穏やかな時間のように、釣は自身の作品を通して、つくる楽しさや喜びを追求しています。

今回の展示では、これまで手がけてきた置き型の作品のほかに、モビールのように天井から吊るして見せる作品や、花のモチーフなどを壁面に散らした作品が展開します。これらの作品は、一針ずつ丁寧に縫われた糸の重なりが絵になる、刺繍をイメージして制作されています。社会全体が他者との隔離を迫られるようになった昨今、自身のなかにある思い出や懐かしい気持ちは、格別の意味を持つようになりました。糸が折り重なるように、蓄積された思い出や他者との繋がりに思いを馳せながら制作された作品です。

創作することの喜びや、つくる時間のなかで得られる充足感が、そのまま伝わってくるような暖かな作品の展示を、どうぞお見逃しなく。

 

 

 

 

 

 

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