何気ない日常風景のなかの、偶然現れた構造的な面白さや違和に注目し、作品を制作する石田。建物にうつる光の模様や、街の一角に植えられた植物などのスナップ写真を基軸に、カメラのシャッターを押した瞬間の景色を、様々なマテリアルを使って作品に展開します。

会場を構成する作品には、紙に印刷した写真のほかに、真鍮を成形したものや、大判の布に植物が印刷されたものなどがあります。素材ごとに展開されるこれらの作品には、一体どのような意味があるのでしょうか。

石田は、写真の「一瞬の出来事を定着させる」という性質に着目し、作品を制作しています。写真撮影という行為を、日常の移ろう一瞬をカメラのフレームで切り取り、保存することと捉え、そして、切り取った一瞬を多様な出力方法によって、私たちの目に触れさせようとしています。

石田が撮影した写真は、紙に印刷されるほか、イメージの一部を抽出して、真鍮や布の作品に昇華されます。抽出されるイメージはどれも、石田がカメラのシャッターを押す瞬間に感じた、違和感や面白みにつながるエッセンスです。実際に見た景色を撮影し、形を変えてリアルな空間に出力しなおすことによって、石田の視点を追随するように、私たちも景色を見て、体感することができます。

様々なマテリアルに出力された写真作品が展開する本展は、会場をまわりながら石田の視点を探り、謎解きをするような楽しさもある展示です。