exhibition 12
open 12:00 – 19:00
佐藤知久(京都市立芸術大学 芸術資源研究センター 准教授)
写真作品《Shadow in the House》シリーズは、時代の変遷とともに所有者が入れ替わ り、多層的な記憶を持つ家の室内空間を被 写体としています。室内に残る歴史の記録であると同 時に、ダンサー が動いた身体の軌跡を長時間露光撮影によって「おぼろげな影」として写し込む ことで、何かの気配や人がそこにいた痕跡を想像させます。それは、複数の住人の記憶が多重露 光的に重なり合い、もは や明確な像を結ぶことのできない記憶の忘却を指し示すとともに、 それ でもなお困難な想起へと開かれた通路でもあります。 大坪は近年、日本各地に現存する「接収住 宅」(第二次世界大戦後の GHQ による占領期に、高級将校とその家族の住居として使用するた め、 強制的に接収された個人邸宅)を対象とし、精力的なリサーチと撮 影を続けています。撮影 場所の選定にあたっては、建築史や都市史 研究者から提供を受けた論文や資料を参照するととも に、「接収住宅」 の所有者の遺族や管理者への聞き取りを行っています。展覧会では、 《Shadow in the House》を写真作品、アーカイブ資料を用いたインスタレーション、 批評テク ストからなる複合的な展示として展開します。これらを通して、「住宅」という私的空間から大文 字の「歴史」 や異文化の接触を捉え直す視座を開くとともに、接収の実態や生活様式の変遷が今 日の私たちの文化や精神性に与えた影響についても考える機会とします。
大坪 晶 Akira Otsubo
http://akiraotsubo.info/
2002年京都文教大学 臨床心理学科卒業。2011年東京藝術大学 先端芸術表現専攻修士課程修 了。 2013年プラハ工芸美術大学 (AAAD) 写真専攻修士課程修了。主な受賞歴に 2017年Japan Photo Award ( 椿玲子選 )、6th EMON AWARD グランプリ、2016年 KYOTOGRAPHIE KG+ public award 受賞、2015年Nikon Salon 三木淳賞奨励賞、 2014年TOKYO FRONTLINE PHOTO AWARD 審査員特別賞 ( 後藤繁雄選 )、2010年天王寺 Mio 写真奨励賞 審査員特別賞 ( 森村泰昌選 )。大阪芸術大学 写真学科 客員准教授。