※全日作家在廊
蒲郡での展示に引き続き、「ユンスル」をテーマとした作品群をlights galleryで展示
一瞬ごとに形を変え、天気や時間帯によって、周辺をまるで違う風景に変えるユンスルは、陰影のもつ曖昧さとも響き合うと思います。どちらも光に依存しながら、光そのものではなく、光と物質、空気、距離の間で生まれる「見えるものの、触れはできない」ものです。本展ではその特徴からなる立体作品と平面作品を展示いたします。
これまで、「時間」と「記憶」という、目には見えないけれど確かに私たちの中に存在するものをテー マに、自分で漉いた紙を用いて作品を制作してきましたが、「今」という瞬間のかけがえのなさ、そして記 憶の不確かさや重なりが、とくにユンスルや陰影の儚さと深く通じるものがあると感じました。今回の作品では、光を受ける素材の表情や、透け、重なり、そしてそこに生まれる陰影の変化を通して、私が制作を続 ける中で最も大切にしていること、つまり「今、この瞬間にしか存在しない」ものをかたちにすることを試みました。
いつからか、人に「美しい」と思わせる風景を創ること、絶えず身体を動かし生きる意味を探り日常を営み、 自分の中にいる「原風景」を可視化することが私が美術家として制作を続ける意味であり理由であることを悟りました。今回の展示はその感覚を意識して作った作品を発表する、私にとってとても大事な機会です。「美しい」は人それぞれかもしれませんが、私の中にある「美しい」を見出すとても貴重な経験をさせてい ただきましたので、よろしければぜひ足を運んでいただき、ご覧いただけますと幸いです。どうぞよろしくお願いいたします。
イヘリム LEE Hyelim
現在、多摩美術大学 芸術学科研究室 助手