Lee Hyelim/時の残像 ( https://lights-gallery.com/archive/2024/06/1744/ ) の展示空間にて、2期目となる参加者の皆さまと、対話型鑑賞ワークショップを開催しました。
今年度のワークショップでは、2期目の皆さまとは「さらに深く広く思考する」ことを目的に計3回の鑑賞に取り組みます。一回目では、「視点を広げる」をテーマに開催しました。 導入では、視点を広げるとはどういうことか、イメージをお見せしながら、対話の補助線となるよう少し解説を行いました。
今回鑑賞した作品は、ライトレールに吊るされた6本の、長さや太さの異なる作品でした。
最初の対話から、早速いろいろな意見が出てきました。「何かが積層してつくられた様子だけれど、作品の印象としては“これから”という印象がある。これは、作品の白さから連想されるイメージだと思う。インクを上から垂らしたらどうなるだろうか?」「様々な長さや太さの作品があって、太い作品にスポットライトが当たっているようだ。けれど、スポットが当たっていない作品の方が長かったりもする。
作品の特徴を自分の持つ要素と重ね合わせて考えてみた。つい得意なことや良い点に注目がいくけれど、実は気づいていないところにも自分の良いところが隠れているのかもしれない」「最初は鍾乳洞のイメージだったのが、近づくと段々柔らかいイメージへと変わっていった。吊るされる前はどうなっていたのか、下から積み重ねて層になったのか、気になる。他にも、床に落ちる影に着目した。」など、今回のテーマである視点の広がりを意識し、多様な切り口や発想をもって発言いただきました。
その後も、さらに発見はないか、作品から考えられることをじっくり思考してゆきます。すると、次のような意見が出てきました。「自分がこの作品を作るとしたらどんな時か想像してみると、子供が生まれたときだと思った。まだ真っ白な状態はスタートを意味していて、層の重なりはこれから重ねていく年の数。人生の出来事によって上からいろんな色のインクを垂らすことで、色同士が影響したり、下まで染み込んだインクが積み重なったりして、段々カラフルになっていくところを想像した」
「抽象的な作品を見ると、自分でも作れそうと感じる反面、今現在、頭の中で様々な思考が巡らされている。こんなに人に考えさせるような作品はきっと自分には作れないだろうと思う。
直感的に感じた印象と、実際に頭で思考していることにギャップがあることに気づいた」「本当にこの作品は層が重なりできたのか?と考えていた。実は中に背骨のような支柱があって、羽のようなふわふわしたものが周りに生えているのかもしれない」
みなさん最後まで作品と向き合い続け、自分の中の考えを拡張したり言語化することに集中されていました。まさに「考えること」に全員で没頭した良い時間となりました。 抽象的な作品を前に、「視点を広げていく」行為は容易いものではありません。たっぷりと時間をかけて諦めずに向き合い続けることで、自分の思考の壁を越えてゆくことができるのだと思います。「話すほどのことではない」と思っていたことを敢えて口に出すことで新たな発見につながってゆく、そんな場面も見られました。
正解のないアート作品だからこそ、おおらかな気持ちで、どんなことでも話してみたり、遊び心を持った発想にチャレンジしてみたり。ワークショップを通して、のびのびとした対話が今後も増えていくことを期待しています。
今回もご参加いただき誠にありがとうございました。