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植村宏木・倉地比沙支 / 知覚の深度 | Perceiving in Depth

lights gallery 倉地比沙支・植村宏木

 

ガラス作品を中心に制作する植村と、版画家の倉地による二人展を開催します。ガラスの彫刻作品と版画作品という異なる媒体、手法を用いながらも、ものの本質を丁寧に掬いとるような表現からは、二人の作家に共通する見えないものへの静かな眼差しが伺えます。

植村は、ガラスという硬度、質感、形が繊細に変化する素材を扱うなかで、身の回りにある、目には見えないけれど確かに意識することができる”もの”を表現しています。それは時間の経過や空気感といった言葉で表されるような、日々この世界に確かに存在するものです。一つ一つ手描きの線を加えることで曇らせるガラスの質感や、美しく設計されたヒビ、生き物のようにあたたかな丸みを帯びたフォルム。ほとんど必然的に作家によって形作られるこれらの作品は、結果として、驚くほどに自然な息遣いを宿しています。

銅版画とリトグラフを組み合わせたリトエッチングの手法を中心に、様々な手法を重層的に用いながら独自の版画作品を展開し続けてきた倉地。これまで彫刻作品のような造形的なモチーフが描かれることが主でしたが、近年、新たに自身の故郷の風景から着想した作品の制作に取り組んでいます。木曽川の流れに沿って砂がたまり、乾燥した大地。その地中にひっそりと流れる伏流水。一見乾いている大地を掘っていくと、そこには潤いがあります。こうした独特の土壌は、故郷の農業や風習を育み、人の営みを支えています。本展では、倉地が幼い頃より親しみ目にしてきた大地を巡る情景を、作家ならではの繊細な版画表現によって展開します。表面は乾き、内面は潤っている。故郷の土壌から見えてくるものは、多くの生物に共通する性質であり、引いては他人には見えにくい人間の内面のようでもあります。本展の作品群を通して見えてくるものは、作家がこれまで追求し続けてきた”ナマ”の感覚といえるでしょう。線密に描き出される地表や水面からは、大地や生命が内にもつ潤いが、静かに、そして力強く表現されています。

二人の作品が同じ空間で関わり合い、生まれる副作用とは……。目に見えないものや、内にあるものの存在に輪郭を纏わせる二人の作品を通して、作家の眼差しに触れてみませんか。

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