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須貝旭・綾理恵 / 青の時間を纏う椅子・緑の光を纏う椅子

Lights Gallery✖️REAL Style

本展は、インテリアショップREAL styleにて販売される、デザイナーの藤森泰司が手がけたオリジナルチェアと、2名の作家がコラボレーションした展示です。ギャラリー空間に置かれた青い椅子と緑の椅子を起点に、作家の須貝旭と綾理恵が独自の解釈をもって作品世界を展開します。

須貝旭による「青の時間を纏う椅子」と題された展示は、2つの作品によって構成されています。青色の濃淡が印象的な作品「for an observation(観測/観察のために)」は、紫外線に反応して塗料が青く発色する古典的な写真技法を用いて制作され、作品が完成した後も、日々僅かに日光の影響を受けて変色していきます。モチーフとして描かれている天文器具には、作品に刻まれた時間の蓄積から自身にとっての現在地・現在時を感じ取るという意味合いがあります。「影の一地点」は、展示空間をゆっくりと回るフラッシュライトがつくる、ある瞬間の椅子の影を蛍光塗料で型取った作品です。ライトの光が通り過ぎ、壁面が暗がりになると、青く光る椅子の影が現れます。これらの須貝の作品には一貫して、時間が流れていく様そのものを感じることと、そのうちの一瞬を捉え対峙することの二面性が存在しています。

綾理恵による「緑の光を纏う椅子」では、古い家屋の趣を残した展示空間内に緑のラグが敷かれ、その上に緑の椅子が置かれています。その空間と調和するように、姿見鏡の縮尺でつくられた綾の作品が並びます。「存在は絶えず震えている」と名付けられた作品群は、作家が作品の支持体や目の前の対象物と向き合いながら感じ取る、”揺れあい”が表現されています。対象と自分自身を注意深く見つめる先にある、綾にとっての”揺れあい”とは一体なんなのか。それは、単にものの形を捉えるのではなく、自身を介して見る、目の前の対象の不確かさに気づく行為ではないでしょうか。綾の作品は、ものや人、空間に存在する不確かさを丁寧にすくい取り、イメージとして支持体に定着させたものといえるかもしれません。本展では、椅子に腰をかけながら作品を鑑賞することができます。作品と、ラグ、椅子、そして空間が融合することで完成する展示です。

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