湯の山開湯1300年を記念したプロジェクトとして、市川タカヒロさん撮影による写真集「KOMONO」を2019年4月に発売しました。
町の人々と協力しながら取材をし、菰野(こもの)町の魅力を作家ならではの視点で捉え、撮影した作品集です。撮影は5月〜10月にかけて行われ、梅雨入り前から秋口にかけて、さまざまな菰野町の風景を取材しました。
菰野町は、温泉地のまわりには御在所岳をはじめとする豊かな自然があり、町には「僧兵まつり」など伝統的な祭事が残り、様々な史実の残る歴史ある土地です。
歴史風土が豊かな町のなかで、どのような視点でカメラを向け、一冊の写真集にまとめていったのか。撮影を通して見つけた町の魅力とは一体何だったのか、市川さんにインタビューしました。
雨の御在所岳で出会えた景色。
(Lights gallery: 以下 L)撮影を通して、菰野町の印象はどのように変わっていきましたか?
(市川さん:以下 市)町の方々の声を聞くことは、僕にとって菰野町の風景のディテールを集めていくことでもありました。丁寧に見ていく事で、1つ1つに発見があり、より身近に菰野町を感じることができました。
雨の日の御在所岳もその一つです、晴れの日もよかったのですが、まだ何かあるような気がしていました。何日も通っているうちに、やっと出会えた景色でした。
町の気配を感じる。
(L)幻想的な写真にはそんな経緯があったんですね。写真集の中では、豊かな自然だけではなく、和菓子職人の手元の写真など、町の雰囲気が伝わるものもありますね。
(市)菰野町は自然と人がとても近い印象がありました、写真家である自分もその土地に流れるリズムに溶け込むことで、人々の仕草や気配を感じていく。その中で撮れた写真を集めたいと思うようになりました。
ページをめくることで得られる体験
(L)最後に、写真集を制作した感想をお聞かせください。
(市)写真集の制作は、僕にとって新しい挑戦でもあり、とても楽しく意味のある時間でした。制作の過程でたくさんの方々に出会い、写真集をより良いものにしたいと強く思うようになりました。手にとって、ページをめくり、写真をみる、という体験を写真集というかたちで実現できたことはとても嬉しく思っています。写真集を通して、伝えられるものがあると思っています。この写真集は、5月〜10月にかけての菰野町なので、冬の菰野町も撮影してみたいと思っています。