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対話型鑑賞ワークショップ:第三回

市川タカヒロ・大西佑一/Variation ( http://lights-gallery.com/archive/2022/12/1556/ )の展示空間にて、3回目の企業様向け対話型鑑賞ワークショップを開催しました。

全3回のワークショップの最終回では、初めて平面作品を鑑賞しました。前2回の立体彫刻、インスタレーションよりもさらに抽象度が高く、要素の削ぎ落とされた作品でしたが、これまでのワークショップでの体験を生かして、作品と向き合い思考し続ける参加者の皆様の姿がとても印象的でした。

鑑賞に入る前に、これまで実施した内容の振り返りと、最終回の目標についてお話しました。前回までのワークショップで、「意識的に観察する」「鑑賞を通しての思考の変化・変遷に気づく」「発想を飛躍させる」「他者の意見に意識を向ける」といったことに取り組んできました。時間をかけて観察し、対話のなかで発想を広げていくことを体験いただいたところで、今回は「自分で情報に気づき、思考を広げていく」ことをテーマとしました。今までのような思考を促すフレームワークやお題はあえて用意せず、鑑賞の後半に作品を一つ増やすことで、それぞれの作品の持つ情報を汲み取り、あわせて、より深く作品を紐解いていくことにチャレンジしました。

参加者の皆様と今回のテーマを共有したところで、早速鑑賞に入ります。暗い背景から線や点の模様が浮かびあがる、一見するとシンプルな作品を前に、近づいたり離れたり、さまざまな角度から、皆様が真剣な眼差しで鑑賞されていました。

十分にご覧になったタイミングを見計らって、作品に対して気づいたことや、感じたことをお伺いしました。作品に写る線や点から連想されるもの、2枚並んだ作品の共通点、対比的に感じるところなどお話していくなかで、参加者の皆様から「作品がとても立体的に見えてきた」という意見も。対話しながら時間をかけて鑑賞することで、作品から受け取る情報量、視点、解釈の幅が増えていき、作品に奥行きや動きを見出す意見につながりました。

鑑賞時間の後半になり、平面作品の手前にある小さな立体作品を、鑑賞に加えることにしました。両手で覆えるほどの作品が床にそっと佇む様子を、参加者の皆様は、かがんだり、平面作品と交互に見たりしながら鑑賞していました。意見を伺っていくと、立体作品そのもののイメージから、徐々に、空間全体の中での位置関係や、立体作品と平面作品それぞれが象徴することへと、意見が広がっていきました。壁面に飾られた平面作品をじっくりと鑑賞したのちに、床に置かれた作品を鑑賞に加えることで、空間的な視点が加わり、より俯瞰した見方や、抽象度を上げた発想へと繋がりました。

鑑賞の最後に、3回のワークショップの感想をお一人ずつお話いただきました。「対話型鑑賞を体験してから、他の展示を見に行っても、分からないと感じるものでも立ち止まって見るようになった。」「回を重ねるごとに段々と自分の思考の癖が見えてきた。日常生活の自分にも当てはまり、非日常的な鑑賞を通して知ることができたのが面白かった。」といったご感想をいただきました。

ご参加誠にありがとうございました。

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